志賀直哉は白樺派の代表的な作家である。彼は明治、大正、昭和にわたって、文壇に活躍した作家である。「小説の神様」と言われた。　　志賀直哉についての研究は多い。たとえば、「志賀直哉と父親の衝突」や「志賀直哉の調和意識」や「志賀直哉の生死観」などの視点から志賀文学や志賀直哉がよく論じられた。志賀文学は「男性の文学」と言われた。しかし、志賀直哉作品の中で描いた女性像は男性像に比べて少しも見劣らず、彼女たちは志賀文学の重要な構成部分だと思う。本論は志賀文学における「妻」という人間像、そして、その変容について究明してみたい。　　本論は三つの部分からなっている。第一章では、志賀文学とその作品に見られる女性像である。この部分には志賀直哉の作品に登場した女性を簡単に紹介する。第二章では、志賀文学の初期の代表作「范の犯罪」をめぐって、「范の妻」の人間像を考察してみる。志賀文学の中期の代表作「好人物の夫婦」をめぐって、「細君」の人間像を考察してみる。志賀文学の後期の代表作「暗夜行路」をめぐって、「直子」の人間像を考察してみる。第三章では、志賀文学における「妻」という人間像の変容及びその要因を考察してみる。　　志賀直哉は各段階の作品に自分の特徴がある。それに従って、各段階の女性像は違う特徴を持っている。完全に無視された「范の妻」、夫に抑圧された「細君」、重要視された「直子」という女性像がある。志賀直哉の作品には、女性のイメージは段々高くなって、封建父権の圧迫が段々弱くなるという変化を見てとれる。